パーキンソン病について
大脳皮質からの命令を筋肉に伝える際に、重要な役割を果たしているものに、神経伝達物質の「ドパミン」があります。パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン神経細胞が変性脱落することによって、運動症状など様々な症状が起こる脳神経疾患です。
パーキンソン病の初期に、特徴的に現れる運動症状には、静止時振戦(せいしじしんせん)、無動(むどう)、筋強剛(きんきょうごう)、姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)の4つがあります。それぞれの症状は、以下のようなものです。
- 静止時振戦(せいしじしんせん)
- 何もしないでじっとしているときに、手や足、顎などがふるえます。何かをするために動かすとふるえはとまります。 片方の手や足のふるえから始まることが多く、1秒間4~6回ぐらいのふるえがあります。睡眠中はふるえがおさまっていますが、目が覚めると再びふるえが始まります。
- 無動(むどう)
- 歩くときに足が出にくくなるなど、動き出すのに時間がかかり、ゆっくりとしか動きができなくなります。話し方に抑揚がなく、声が小さくったり、書く文字が小さくなったりもします。
- 筋強剛(きんきょうごう)
- 肩、膝、指などの筋肉が固くなって、スムーズに動かしにくくなります。他人が曲げようとすると、カクカクとした抵抗感がある場合があります。 顔の筋肉がこわばることで、無表情に見えることもあります。また痛みを感じることもあります。
- 姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)
- 体のバランスがとりにくくなり、転びやすくなります。歩いていて止まれなくなったり、方向転換が難しくなったり、 症状が進行すると、首が下がる、体が斜めに傾く、ということもあります。転倒し、骨折等の危険性もあるので、注意が必要です。
この他、非運動症状として、便秘や頻尿、低血圧などの自律神経障害、においがしなくなる嗅覚障害、不眠などの睡眠障害、疲労や肩痛・腰痛、体重減少、さらにはもの忘れなどの認知障害や、うつなどの精神症状が現れる場合があります。
パーキンソン病の治療
パーキンソン病の治療としては、現在、薬物療法、デバイス補助療法、リハビリテーションなどがあります。当クリニックでは、患者様一人一人を丁寧に診察し、病状や病気の段階に合わせて、適切な治療を行っていきます。
- デバイス療法が必要と判断した場合は、対応可能な病院と連携して行います。
薬物療法は、L-ドパやドパミンアゴニストという薬を中心に、いくつかの薬剤を組み合わせて行います。パーキンソン病の患者様は、脳内のドパミンが不足している状態ですが、それを補えば症状が改善します。L-ドパは、脳内で代謝されてドパミンに変換され、硬化を発揮します。またドパミンアゴニストは、脳内でドパミンと同じようにドパミン受容体に結合し効果を発揮するものです。
それぞれどちらにも特徴があり、使い分けていきますが、これらの薬による治療を長く続けていると、薬の効果が弱まり、薬が効いている時間といない時間を繰り返したり(ウエアリングオフ)、手足や口など、自分の意志に関係なく体が動く不随意運動(ジスキネジア)が起こったりと、運動合併症が現れる場合があります。
デバイス補助療法は、薬物療法を5~10年続けているうちに、運動合併症が発症し、治療が難しくなってきたときに検討される治療法です。これには「L-ドパ持続経腸療法」と、「脳深部刺激療法(DBS)」があります。
「L-ドパ持続経腸療法」は、胃瘻を増設し、専用ポンプとチューブを用いて、薬剤(L-ドパ)を直接、吸収部位の小腸に送り込む経腸療法で、起きている時間(最大16時間)、持続的に投薬することで日常生活を支障なく送ることができるようにするものです。
「脳深部刺激療法(DBS)」は、手術によって脳の深部に細い電線を挿入し、さらにパルス発生器を胸の前部に埋め込んで、脳に弱い電気信号であるパルスを送る治療法です。パルスの刺激によって、症状の改善が期待できるものです。
またパーキンソン病の治療では、運動療法や作業療法などのリハビリテーションも重要です。関節が固くなったり動かしにくくなったりすることや、バランスをとる能力が低下することを予防し、入浴やトイレなどの日常生活で介助の必要が少なくなることが、リハビリテーションによって期待できます。また日中、横にならず過ごすことで、薬が効いている時間も伸びると考えられており、薬物療法とともに併せて行うことが大切です。